2026年3月に行ったUACAの春季合宿では、トレーニングだけでなく、成長期の選手に必要な「栄養」についての講習会も実施しました。
その中で外部講師をオンラインで招き参加者が学んだ内容を共有します、
結論、
陸上競技が上達するためには、もちろん練習が必要です。
しかし、練習を頑張っているだけで身体が強くなるわけではありません。
成長期の選手にとって大切なのは、
運動・栄養・休養の3つを循環させることです。
練習で身体に刺激を入れ、食事で成長と回復に必要な材料を補い、睡眠によって身体を回復させる。
どれか一つだけではなく、この3つがそろって初めて、練習の効果を十分に引き出せます。
今回の記事では、合宿中の栄養講習会で選手たちに伝えた内容を、保護者の皆さまにも分かりやすい形でまとめます。
目次
- 1 ジュニア選手が抱えやすい悩み
- 2 成長期は「競技力」と「身体」が同時に育つ時期
- 3 成長期の身体は、想像以上にエネルギーを使っている
- 4 身長を伸ばすために、特別な食べ物は必要なのか
- 5 まず優先したいのは「糖質」
- 6 朝食を「食べたこと」にしない
- 7 たんぱく質は「一度に大量」ではなく、回数を増やす
- 8 練習後は「糖質+たんぱく質」
- 9 ビタミン・ミネラルは、食べた栄養を働かせる
- 10 骨を強くするのはカルシウムだけではない
- 11 水分補給は、夏だけの問題ではない
- 12 睡眠は、成長期の選手にとって「最も重要な練習」の一つ
- 13 「完璧な食事」を目指さなくていい
- 14 プロテインや栄養補助食品をどう考えるか
- 15 食べる量は、他の選手と比べなくていい
- 16 今日から始める3つの行動
- 17 選手の努力を、練習時間だけで判断しない
- 18 最後に
ジュニア選手が抱えやすい悩み
講習会では、まず選手たちに、普段どのような悩みを感じているかを聞きました。
- 身長を伸ばしたい
- 身体を大きくしたい
- 好き嫌いが多い
- 練習の途中で集中力が切れる
- 疲れが残りやすい
- 怪我を繰り返してしまう
- 朝はあまり食べられない
- 練習前後に何を食べればよいか分からない
このような悩みは、特別な選手だけが抱えるものではありません。
成長期の選手には、とてもよく見られる悩みです。
そして、その原因が技術や筋力だけにあるとは限りません。
日常的なエネルギー不足、睡眠不足、朝食の欠食、練習前後の補給不足などが、身体の動きや集中力、疲労回復に影響していることもあります。
成長期は「競技力」と「身体」が同時に育つ時期
小学生から中学生にかけては、身長や骨、筋肉、内臓など、身体全体が大きく成長する時期です。
特に身長が急激に伸びる時期は、一般的に「成長スパート」と呼ばれます。
ただし、成長する時期には大きな個人差があります。
同じ学年でも、すでに身長が大きく伸びている選手もいれば、これから成長が始まる選手もいます。
そのため、身体の大きさだけを比較して、
「自分は成長していない」
「周りより身体が小さいから競技に向いていない」
と考える必要はありません。
成長の早い選手と遅い選手がいるだけで、成長のタイミングは一人ひとり異なります。
大切なのは、成長が始まったときに十分な栄養と休養を確保できる状態をつくっておくことです。
成長期の身体は、想像以上にエネルギーを使っている
成長期の選手は、次の3つにエネルギーを使っています。
- 日常生活を送るためのエネルギー
- 身長や骨、筋肉を成長させるためのエネルギー
- 練習や試合で身体を動かすためのエネルギー
つまり、運動をしていない子どもと比べても、スポーツをしている子どもは多くのエネルギーを必要とします。
練習量が多い選手の場合、朝・昼・夜の3食だけでは、必要なエネルギーを補いきれないこともあります。
農林水産省のジュニアアスリート向け資料でも、運動量が多い子どもは必要な食事量も多く、3食だけで不足する場合には補食を活用する考え方が示されています。
食事量が不足した状態が続くと、練習を頑張っているにもかかわらず、
- 身体が大きくならない
- 疲労が抜けない
- 集中力が続かない
- 体調を崩しやすい
- 怪我を繰り返す
- 練習の質が上がらない
といった状態につながる可能性があります。
特に成長期では、体重を落とすことよりも、まずは成長と競技に必要なエネルギーを確保することが重要です。
身長を伸ばすために、特別な食べ物は必要なのか
選手からよく聞かれるのが、
「何を食べれば身長が伸びますか?」
という質問です。
結論から言えば、何か一つの食品を食べただけで、急に身長が伸びるわけではありません。
牛乳だけをたくさん飲んでも、ご飯を食べずに肉だけを食べても、身体の成長に必要な栄養を十分に補うことはできません。
身体を成長させるためには、
- 身体を動かすための糖質
- 筋肉や骨の材料になるたんぱく質
- 骨の形成に関わるカルシウム
- 血液づくりに関わる鉄
- 身体の機能を整えるビタミンやミネラル
- 十分な水分
- 十分な睡眠
などを、日々の食事から継続して取る必要があります。
特別な食品を探すよりも、毎日の食事を大きく崩さないことの方が重要です。
まず優先したいのは「糖質」
スポーツをしている子どもにとって、糖質は非常に重要です。
糖質は、ご飯、パン、麺、餅、いも類、果物などに多く含まれており、身体や脳を動かすための主なエネルギー源になります。
糖質が不足すると、
- 練習中に動けなくなる
- 後半に集中力が落ちる
- 身体が重く感じる
- 判断が遅くなる
- 練習後の疲れが強く残る
といった状態が起こりやすくなります。
「身体を強くしたいから、肉やプロテインを取る」
という考えも間違いではありません。
しかし、そもそも練習をするためのエネルギーが足りていなければ、身体はたんぱく質を成長や回復に十分活用できません。
まずは、練習で使うエネルギーを糖質から確保することが大切です。
練習前におすすめしやすいもの
練習まで時間がある場合は、
- おにぎり
- うどん
- 食パン
- バナナ
- 餅
- カステラ
- あんパン
などが候補になります。
練習直前は、脂質が多く消化に時間がかかる食品を大量に食べると、胃が重くなることがあります。
練習開始までの時間や本人の体質に合わせて、量を調整することが必要です。
朝食を「食べたこと」にしない
朝食について選手に聞くと、
「食べています」
と答えていても、詳しく確認すると、
- パンを2口だけ
- 牛乳だけ
- ゼリーだけ
- 果物だけ
ということがあります。
もちろん、何も食べないよりは良いかもしれません。
しかし、成長期の選手が午前中の授業を受け、学校生活を送り、夕方から練習をすることを考えると、それだけでは十分とは言えません。
農林水産省は、毎日朝食を食べる子どもほど体力合計点が高い傾向や、学力調査の平均正答率が高い傾向があることを紹介しています。ただし、これは朝食だけが直接の原因と断定するものではなく、生活習慣全体との関連として見る必要があります。
朝から完璧な食事を用意する必要はありません。
まずは、
- パンを1枚食べ切る
- おにぎりを1個食べる
- 卵やヨーグルトを追加する
- 果物を一つ追加する
- 前日の残りの味噌汁を付ける
など、現在の朝食に一品追加するところから始めてみてください。
たんぱく質は「一度に大量」ではなく、回数を増やす
たんぱく質は、筋肉だけでなく、骨、皮膚、血液、酵素など、身体をつくるさまざまな材料になります。
主に次のような食品から取ることができます。
- 肉
- 魚
- 卵
- 牛乳・乳製品
- 豆腐
- 納豆
- 豆類
よくあるのが、夕食で肉を大量に食べる一方で、朝食や昼食、練習後にはほとんどたんぱく質を取っていないケースです。
たんぱく質は、一度にまとめて取るよりも、朝食・昼食・夕食・補食などに分けて取る方が、日常の食事として実践しやすくなります。
たとえば、
- 朝食に卵やヨーグルトを追加する
- 昼食に肉や魚のおかずを入れる
- 練習後に牛乳やヨーグルトを取る
- おにぎりの具を鮭やそぼろにする
- 補食にゆで卵を使う
といった方法があります。
「今日は肉をたくさん食べたから大丈夫」ではなく、1日の中で何回取れたかにも目を向けてみましょう。
練習後は「糖質+たんぱく質」
練習後は、使ったエネルギーを補い、身体の回復に必要な栄養を取ることが大切です。
そのため、たんぱく質だけではなく、糖質も一緒に取ることが基本になります。
たとえば、
- 鮭おにぎり+牛乳
- そぼろおにぎり
- バナナ+ヨーグルト
- あんパン+牛乳
- サンドイッチ
- おにぎり+ゆで卵
などです。
帰宅後すぐに夕食を食べられる場合は、無理に補食を増やす必要はありません。
一方で、練習終了から夕食まで時間が空く場合や、練習後に食欲が落ちやすい場合には、食べやすいものを少量補う方法が有効です。
補食はお菓子ではなく、不足する食事を補うものと考えると分かりやすいでしょう。
ビタミン・ミネラルは、食べた栄養を働かせる
野菜や果物、海藻、きのこ類などに多く含まれるビタミンやミネラルは、直接大きなエネルギーになるわけではありません。
しかし、糖質やたんぱく質を身体の中で利用したり、体調を整えたりするために必要です。
たとえば、ビタミンB1は糖質からエネルギーをつくる過程に関わります。
豚肉などに多く含まれるため、
ご飯+豚肉
という組み合わせは、運動量の多い選手にも取り入れやすい食事です。
また、鉄は血液中のヘモグロビンの材料となり、酸素を身体に運ぶために必要です。
特に、成長期の選手や月経のある女子選手は、鉄不足に注意が必要な場合があります。
鉄を含む食品には、
- 赤身の肉
- レバー
- 魚
- 貝類
- 卵
- 大豆製品
- 一部の青菜
などがあります。
ただし、強い疲労感、息切れ、立ちくらみ、顔色不良、競技力の急な低下などが続く場合は、食事だけで判断せず、医療機関へ相談することも必要です。
サプリメントを自己判断で大量に取ればよいわけではありません。
骨を強くするのはカルシウムだけではない
骨の成長というと、カルシウムだけに注目しがちです。
しかし、骨の健康には、
- カルシウム
- たんぱく質
- ビタミンD
- マグネシウム
- 十分なエネルギー
- 適切な運動刺激
- 睡眠
など、複数の要素が関わっています。
乳製品、小魚、大豆製品、緑色の野菜などを取り入れながら、食事全体を整える必要があります。
また、成長期は身長が急激に伸びる一方で、身体の柔軟性や筋力、動作の感覚が一時的に変化することがあります。
「以前できていた動きが急にうまくできない」
「身体が硬くなったように見える」
「接地や姿勢が不安定になった」
といった変化が起きることもあります。
そのような時期に、栄養不足や睡眠不足が重なると、身体への負担がさらに大きくなる可能性があります。
食事だけでなく、練習量や身体の状態も含めて観察することが大切です。
水分補給は、夏だけの問題ではない
水分補給というと、暑い夏だけをイメージするかもしれません。
しかし、汗は冬の室内練習でも出ています。
水分が不足すると、
- 集中力が落ちる
- 身体が動きにくくなる
- 心拍数が上がりやすくなる
- 疲労感が強くなる
- 体温調節が難しくなる
可能性があります。
練習直前に一気に飲むのではなく、学校生活や移動中も含めて、こまめに水分を取ることが大切です。
汗を多くかく練習では、水だけでなく、状況に応じて塩分などを含む飲料を活用することも考えます。
ただし、普段から糖分の多い飲料ばかりを飲む必要はありません。
練習内容、気温、発汗量、練習時間に合わせて選択することが必要です。
睡眠は、成長期の選手にとって「最も重要な練習」の一つ
講習会で特に強く伝えたのが、睡眠の重要性です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠時間の目安として、
- 小学生:9~12時間
- 中学生・高校生:8~10時間
が示されています。
たとえば、朝6時30分に起きる小学生が9時間眠るためには、午後9時30分には眠っている必要があります。
10時間眠る場合は、午後8時30分です。
実際には、入浴、歯磨き、明日の準備などもあるため、寝る直前までゲームや動画を見ていると、必要な睡眠時間を確保できません。
「練習を休まず頑張っているから大丈夫」
ではありません。
睡眠不足の状態で練習を続けても、回復が追いつかず、集中力や判断力が低下することがあります。
練習時間を増やす前に、睡眠時間が削られていないかを確認する必要があります。
YouTubeやゲーム、スマートフォンを見る時間を1時間減らし、その分早く眠る。
それだけでも、選手にとっては立派な競技力向上への取り組みです。
「完璧な食事」を目指さなくていい
栄養の話をすると、
「毎日完璧な献立を用意しなければならない」
と感じる保護者の方もいるかもしれません。
しかし、最初から100点を目指す必要はありません。
毎日の食事づくりを完璧にしようとすると、本人だけでなく、保護者の負担も大きくなります。
大切なのは、現在の食事に「プラス1」をすることです。
たとえば、
- 朝食に卵を追加する
- パンにチーズを乗せる
- ヨーグルトにきな粉を入れる
- 味噌汁に豆腐やわかめを追加する
- おにぎりの具を鮭やそぼろにする
- 練習後に牛乳を飲む
- 夕食まで時間が空く日は補食を持たせる
- 果物を1日1回取り入れる
こうした小さな工夫でも、毎日積み重なれば大きな違いになります。
プロテインや栄養補助食品をどう考えるか
プロテインや栄養補助食品は、使うだけで身体が大きくなったり、競技力が急激に上がったりするものではありません。
基本になるのは、あくまでも日々の食事です。
プロテインは主にたんぱく質を補う食品です。
一方で、商品によっては糖質、カルシウム、鉄、ビタミン、ミネラルなどが加えられているものもあります。
UACAの講習会では、栄養補助食品の一例として「MAJIDE」についても紹介しました。
ただし、どのような商品でも、
- 普段の食事で何が不足しているのか
- いつ使用するのか
- 食事の代わりにしていないか
- 年齢や体質に合っているか
- 商品表示どおりに利用しているか
を確認する必要があります。
朝食が極端に少ない日、練習後から夕食まで時間が空く日、空腹のまま練習が始まってしまう日などに、食事を補う選択肢として使うことはできます。
しかし、補助食品を飲んだから、朝食や夕食を食べなくてもよいわけではありません。
あくまでも「食事を支える補助」として考えることが大切です。
食べる量は、他の選手と比べなくていい
同じ年齢、同じ学年でも、必要な食事量は異なります。
- 身長
- 体重
- 成長段階
- 練習量
- 練習時間
- 性別
- 体質
- その日の活動量
などによって変わるためです。
「チームメイトがこの量を食べているから、自分も同じ量を食べなければならない」
とは限りません。
まずは、現在の食事と身体の反応を観察します。
- 練習の最後まで動けているか
- 練習後に強い空腹がないか
- 朝起きたときに疲労が残っていないか
- 体重が急激に減っていないか
- 集中力が保てているか
- 怪我や体調不良を繰り返していないか
- 身長や体重が成長曲線に沿って変化しているか
こうした部分を継続して見ることが重要です。
今日から始める3つの行動
講習会の最後には、選手たちへ「全部を一気に変えなくていい」と伝えました。
まずは、次の中から一つ選んで始めます。
1.練習前に糖質を取る
空腹のまま練習へ行っている選手は、おにぎり、パン、バナナなどを少量取ってから練習し、身体の動きや集中力の違いを観察します。
2.たんぱく質を取る回数を増やす
夕食だけでまとめて取るのではなく、朝食、昼食、補食、夕食に分けて取り、翌日の疲れの残り方を観察します。
3.就寝時間を1時間早める
動画やゲームの時間を少し減らし、睡眠時間を増やして、朝の目覚めや練習中の集中力を観察します。
大切なのは、知識を得たことで満足しないことです。
食事や睡眠は、話を聞いただけでは身体を変えてくれません。
実際に一つ行動し、その結果として身体がどう変わるのかを観察するところまでが栄養の実践です。
選手の努力を、練習時間だけで判断しない
指導をしていると、練習中に一生懸命取り組んでいる選手をたくさん見ます。
しかし、本当に競技へ向き合うということは、練習中だけ頑張ることではありません。
- 朝食を食べる
- 練習前に補食を準備する
- 水分を持ってくる
- 夜更かしを減らす
- 疲れている日は早く寝る
- 自分の体調を言葉にする
これらも、競技者として大切な取り組みです。
特にジュニア期は、競技力を高めるだけでなく、将来に向けて身体をつくる大切な時期です。
今すぐ結果が見えなくても、日々の食事と睡眠は、数か月後、数年後の身体につながっていきます。
最後に
今回の栄養講習会で、選手たちに最も伝えたかったことは、
完璧を目指すのではなく、今日から一つ始めること
です。
食事も睡眠も、1日だけ完璧にして終わりでは意味がありません。
無理なく続けられる小さな行動を見つけ、身体の反応を観察しながら、自分に合った方法へ調整していくことが大切です。
練習で身体に刺激を入れる。
食事で材料を補う。
睡眠で回復し、成長する。
この循環を整えることが、成長期の選手の可能性を最大限に引き出す土台になります。
UACAでは、走り方やトレーニングの指導だけでなく、選手が自分の身体について学び、自分で考えて行動できるようになることも大切にしていきます。
まずは一つ。
今日の食事、練習前の補食、今夜の就寝時間から変えてみてください。
UACAではMAJIDEという商品をクラブ価格にて販売しております。
ぜひ活用してみていただきたいです。
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