普段の指導から『これをやれば絶対速くなる』というのは言わず、あくまでもその人に合った練習メニューや技術を落とし込んでいます。
なので、10人指導すれば10通り以上の指導内容が存在します。
これらを他の選手や指導者、また陸上競技未経験者の方が少しでも分かる様に記事にするシリーズ化したいとも考えました。
1回目である今回は、
8月19日に個人のInstagramアカウントに投稿した記事のフィードバックをします。
Instagram URL
https://www.instagram.com/p/CSwQZy9hYgM/?utm_medium=copy_link
この投稿の反響は想像以上に多かったです。
また、パーソナル指導前と指導後での比較動画に関して
『ここが変わったね!』とDMでコメントしてくれる方もいれば
『どこが変わったの?』と素直にDMで聞きにくれる人もいたり、直接聞いてくれた方もおりました。
今回は、私が普段UACA Jr.で指導している高校2年生女子(※2021年10月時点)で、
専門種目は400m。
同種目で東北大会準決勝まで進出している選手で、
2022年シーズンではインターハイ出場を目標に取り組んでおります。
当時の彼女の悩みとしてうまく加速に乗れない時があり練習で良くても試合では悪い癖が出てしまうとのことでした。
今回の指導では、結果的に約2時間のパーソナル指導でしたが明らかに変わっております。
ましてや、試合で着用するようなスパイクではなく、ランニングシューズです。
これがまたスゴいと感じました。
投稿から約2ヶ月経過しておりますが、私のアウトプットとして、また修正前と修正後で何が違うか分からない人のために解説していきたいと思います。
修正前・修正後動画比較
まずは、動画を見てもらいます。
修正前
修正後
どうでしょうか、違いわかりますか?
1歩目
撮影した位置が多少違いますが、修正前と修正後とでは1歩目の際の上体の高さ(位置)が違いますよね!
また、右足(支持脚)の膝下の角度も違うことが分かります。
3歩目
1歩目同様に、まず上体の高さが違います。
また、3歩目以降の課題としてありましたが、修正前では右足裏全体(支持脚)が地面に接地していることがわかるでしょうか?反対に、修正後はカカトが浮いているのが見えますか??
スタートから30mくらいまでは、一般的に
一次加速
といわれておりますが、実際には距離は関係なく、上体が自然と前傾しているのであれば、それに伴う動きをしなくてはうまく加速ができないです。
短距離選手の中には「スタートからの爆発的な加速力はあるけど、トップスピードが低く、後半に追い付かれてしまう選手」や、「トップスピードは高くて後半追い込んでいくのは得意だけど、スタートで大きく出遅れてしまっている選手」などと、得意な局面、不得意な局面がある選手も多いでしょう。
よく勘違いされがちですが、大事なことは「局面に応じて、どのような筋力が必要かを理解すること」だと思います。
また、一次加速(二次加速)局面ではいかに爆発的な加速力を生むかも大事です。
よく走りの中で
バネ
と表現することが多いのですが、
このバネの正体とは、ずばり「腱」です。筋肉は腱とつながっており、その腱は骨に繋がっています。
例えばふくらはぎの筋肉は、アキレス腱とつながっています。そしてこのアキレス腱は踵にくっ付いており、筋肉が発揮した力を合理的に骨に伝える役割を持っています。
縄跳びをするようなジャンプしたとき、筋肉は力を発揮して「キュッ」と硬く収縮します。この時、自ら縮むことはしないアキレス腱は、強く素早く引き伸ばされることになるわけです。
そして、強く素早く引き伸ばされた腱は、ゴムのように引き伸ばされたエネルギーを蓄えることになり、その後パチンコのように一気に短縮しようとすることで、大きなパワーを生み出します。これが、バネの正体です。
このバネのような運動、「ストレッチショートニングサイクル運動(SSC運動)」とも呼ばれており、爆発的な運動パフォーマンスを高めるために重要な役割を担っていることが分かっています。
また、ランニングでの一歩一歩においてもこの「バネの力」が常に働いているため、この「バネの力」は効率よく、速く走るためにも重要な能力であると感じます。
加速区間における前傾姿勢を行なっている際にカカトが地面つくということは、
うまくふくらはぎの筋肉を使えず、前へ進むバネが生み出されませんが、
少しでもカカトが浮くことによってふくらはぎの筋肉が一瞬でキュッと硬くでき、
それに伴うアキレス腱が引き伸ばされ、自然に縮もうとする反応が起きます。
これは「伸張反射」と言われています。
また、筋肉は「縮みながら」よりも「勢いよく引き伸ばされながら」の方が、大きな力を発揮することができるという性質を持っています。
これにより爆発的に加速力が生まれました。
また、スタートに安定感を持たせるため、スタートから5歩までのところで正しい動きができた上での接地場所にマーカーを配置しました。
また、修正したスタートを今度は400mのスタートに活かせるようにカーブでのスタート練習も実施。
こちらも6歩目(左足)以降で自然とカーブに入っていけるように5歩目までのところに、マーカーを配置しました。
動画を見てもらえれば分かりますが、まだ改善点はあるものの当初の修正前の動画に比べればとてもうまくスタートできているのが分かります。
まとめ
修正するにあたってどのように取り組んだかというのは、冒頭にも記載したのですが、
10人いれば10通り以上のメニューが存在し、その人に合ったメニューもあれば、そうじゃないメニューもあるので記載しないようにしております。
自分に合った練習メニューを発見・開発できれば一番良いのですがなかなかそうもいきません。
また、普段から指導している選手ということもあり、今回は修正まで約2時間で出来上がったので選手と指導者の信頼関係の構築もあったのかと思います。
今後、これをシリーズ化し少しでも参考になってくれれば幸いです。