小・中学生が陸上競技をはじめとするスポーツに本格的に取り組むとき、保護者や指導者の多くが気にするのが「成長期の身体にどれだけ負荷をかけていいのか」という問題です。
確かに、体格が整わないうちに過度な練習を積むと、オーバーユース(使いすぎ)から怪我につながるリスクも高まります。
とはいえ、成長期は将来の競技力を伸ばす上で大切な“ゴールデンエイジ”でもあり、適度な刺激が心身の発達に好影響を及ぼすのも事実。
ここでは、成長期の小・中学生が気を付けたい練習量と体づくりを、より深く掘り下げて考えてみましょう。
目次
成長期ならではの身体の特徴
骨と軟骨の発達
• 小・中学生は骨の成長が盛んで、骨端線(成長軟骨)がまだ閉じていません。大人よりも柔軟性がある反面、大きな衝撃や繰り返される負荷には弱いという面も。
• 急激な身長の伸びがあるタイミングで、大腿骨や脛骨といった主要な骨が伸びる速さに筋肉が追いつかず、筋や腱が張りやすくなることも多いです。たとえば、オスグッド病(膝の痛み)やシーバー病(踵の痛み)は成長期特有の代表的な症状。
筋力バランスと体幹
• 身長に比べて筋量や体幹の安定感が不足しがち。特に走る・跳ぶなど高負荷の動作でフォームが崩れやすく、その結果、足首・膝・腰に負担が集まってしまうことも。
• 小・中学生の段階では、筋肥大を狙った高重量トレーニングよりも、体幹の安定や動きの質を高めるメニューを優先したほうが安全で、長期的に見ても競技力アップに繋がりやすいとされています。
心肺機能と持久力
• 成長期に無理な長距離練習を積みすぎると、疲労が抜けきらないまま翌日以降の練習を重ねることになりがち。中学で部活に入ると練習日数が増えるケースも多く、適度な休養をどう確保するかがポイントになります。
練習量のコントロール:やりすぎを防ぎ、成長を促す
週の休息日を明確に設定
• 週に最低1~2日は“完全休養”または負荷の低いトレーニングの日を設ける。
• 「毎日走らないと不安」という意識に駆られがちですが、むしろ休養こそ成長ホルモンの分泌や疲労回復に不可欠。
練習時間と強度のメリハリ
• 小学生なら1回あたり60~90分程度、中学生でも120分ほどを目安に、集中して質の高い練習を行う。
• 長時間ダラダラ走らせるよりも、短い時間で集中力を高めたスプリントやドリルを組み合わせるほうが効率的。
シーズンや試合スケジュールに合わせた調整
• 陸上競技では、春夏に大会が集中するケースが多い。オーバーワークを避けるため、試合の前後は練習量を適切に増減させる。
• 学校行事やテスト期間とも重なる時期は、無理をして練習時間を確保しようとせず、学業とのバランスをとることも重要。
効果的な体づくり:軸(体幹)・多様な動き・怪我予防
体幹と基礎体力の強化
• 姿勢を保つ筋肉(コアマッスル)を中心に、プランク・サイドプランク・ブリッジなどで土台づくり。
• 足首や股関節周りのトレーニングも大切。バランスディスクや片足スクワットなどを取り入れ、関節の安定性を高めるとフォームのブレが減る。
多様な運動経験で“動きの幅”を広げる
• 小・中学生のうちは、1つの種目だけでなく様々な運動を楽しむことが将来の運動能力全般の向上につながる。
• ジャンプ系ゲームやボール遊び、体操的な動きなど、競技とは異なる動きから得られる刺激を体に覚えこませることで、怪我予防と総合的な運動能力のアップが期待できる。
怪我予防のためのウォーミングアップ&クールダウン
• 動的ストレッチ:練習前に関節をしっかり動かすウォーミングアップで体温を上げ、筋肉・腱・靭帯を伸ばす。
• 静的ストレッチ:練習後は静的ストレッチで筋の疲労回復を促す。特にハムストリング・ふくらはぎ・股関節周りは念入りに。
保護者とコーチの連携:練習の客観的評価とフォロー
定期的なコミュニケーション
• 子どもが「痛い」と言いづらい状況を作らないために、保護者やコーチが「今日はどこか痛くない?」「疲れは大丈夫?」と声をかける。
• 発熱や体調不良、睡眠不足などが続いていないかもチェック。ちょっとした不調が怪我の引き金になる場合もある。
スケジュールの“見える化”
• 週や月単位で、学校の予定・試合・練習日をまとめたカレンダーを作り、負荷が過度に偏らないよう調整する。
• テスト期間や行事が重なるときは、思い切って練習を軽めにするなど、「量より質」を意識した計画を作る。
専門家への早めの相談
• 痛みや違和感が長引く場合は、整形外科やスポーツクリニックを受診し、早期に対処する。
• コーチやトレーナーと連携してリハビリメニューや練習復帰のタイミングを慎重に見極める。
実践例:成長期の練習スケジュール(例)
曜日 | メニュー | ポイント |
---|---|---|
月 | 休養 or 軽めのジョグ | 週明けは疲労回復に充てる |
火 | スピード系(30m~50mダッシュ等) | 高い集中力で短時間勝負 |
水 | 体幹強化 + 技術ドリル (動きづくり中心) | 負荷を抑えフォーム向上 |
木 | インターバル or ペース走 (中学生向け) | 心肺機能を刺激、距離は適度に |
金 | 休養 or 軽いストレッチ・ヨガ | 勉強・家族との時間を確保 |
土 | 試合形式 or ゲーム形式 | 楽しみながら走・跳ぶ刺激を入れる |
日 | 完全休養 or 家族と軽いレジャー運動 | オーバーユースを避ける |
※あくまで一例であり、個人差や学校行事、大会日程によって調整が必要
まとめ:焦らず確実に、成長期の体を育てる
1. 無理な練習量に要注意:週の休息日をしっかり取り、1回の練習も2時間以内に集中させる。
2. 体幹&多様な運動を取り入れる:筋肉・関節をバランスよく発達させ、ケガのリスクを減らす。
3. 保護者・コーチと連携:子どもの体調や成長ペースを共有しながら、負荷の調整やメニューを設定。
4. 痛みを感じたら早めのケア:自己判断で無理を続けると、将来的な競技寿命にも影響が出かねない。
成長期は「心身の基礎作り」に最適な時期である反面、「体が未完成」であるからこそ慎重さも必要です。この時期にバランスよく取り組むことで、将来の競技力だけでなく、一生ものの健康づくりにも大きく貢献します。お子さんの可能性を伸ばすためにも、焦らず、しかし着実にステップを踏むことを意識していきましょう。
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