以下の文章は、「陸上競技選手にとってのウォーミングアップ」について、小学生から社会人選手まですべてのレベルに役立つ内容をまとめたものです。
これを読めばほかの記事は読まなくてもいいくらい、必要なポイントを網羅しています。ぜひ保存して、日々の練習前や大会前に活用してください。
1. ウォーミングアップの目的・意義
ウォーミングアップはただ体を温めるだけではありません。
陸上競技におけるウォーミングアップの目的は、大きく4つに分けられます。
1. 体温・筋温の上昇
• 筋肉や関節を温め、ケガを予防する
• 酸素や栄養が行き届きやすくなる
2. 神経系の活性化
• 動きや反応速度を高める
• 競技で求められる動きへのスイッチを入れる
3. 精神的な準備
• 競技に向けた集中力の向上
• プレッシャーや緊張をコントロールする
4. テクニックの確認・習熟
• 走る・跳ぶ・投げるといった基本動作を再確認
• フォームを整え、身体の使い方を思い出す
2. ウォーミングアップの全体構成
ウォーミングアップは大きく以下の流れで構成すると、効率的かつ効果的です。
UACAでのコース内でも以下の構成を基本とし行っております。
1. ジョギングなどの軽い有酸素運動
• 目的:体温・筋温を上げる
• 例:5〜10分の軽いジョギング、スキップなど
2. ダイナミックストレッチ
• 目的:関節の可動域拡大・筋肉の伸張性向上
• 例:レッグスウィング、アームサークル、ヒップオープナーなど動きを伴うストレッチ
3. ドリル(ステップ・スキップ・プライオメトリックスなど)
• 目的:神経系の活性化・フォームの確認
• 例:Aスキップ、Bスキップ、リズムジャンプ、バウンディングなど
4. 競技特性に合わせた動作練習
• 目的:実際の競技動作に近い刺激
• 例:短距離なら加速走・スタート練習、中長距離ならペース走の導入部分、跳躍なら助走の確認、投てきなら軽めの投げ動作など
5. 仕上げのスプリントやテンポアップ(種目に合わせる)
• 目的:最大出力に近い状態に体を慣らす
• 例:30〜50mの全力走(短距離)、中距離選手なら50〜100m程度のスピード走(流し)、投てきなら数回の実投
3. ウォーミングアップで意識したいポイント
1. 小学生の場合
• 遊びの要素を取り入れる:ラダードリルやケンケンパなどのリズム遊び
• 同じ動きの繰り返しだけでなく、多様な動きで体のバランスを良くする
• 筋肉への負荷が強すぎないようにする(成長期のためケガリスクに配慮)
2. 中・高生の場合
• 骨格が成長しきっていない段階なので、「急に負荷を高めない」ことが重要
• ダイナミックストレッチを丁寧に行い、可動域を確保してからドリルに入る
• 無理に可動域を広げるスタティックストレッチ(静的ストレッチ)はウォーミングアップの終盤かクールダウンに回す
3. 大学生・社会人の場合
• 仕事や学業との両立で疲労が溜まりやすいので、筋肉や関節の状態を確認しながら進める
• 「慣れているから」と省略しがちなウォーミングアップをしっかり行うことでパフォーマンスが安定し、ケガを予防できる
• 種目に合わせてウォーミングアップの後半に高負荷の動きを入れ、神経系を最大限に引き出す
4. ウォーミングアップの具体例
4.1 軽い有酸素運動 (5〜10分)
• ジョギング:コートやトラックの外周を軽いペースで2〜3周
• スキップ:前後にゆっくりスキップしながら心拍数を上げる
4.2 ダイナミックストレッチ (5〜10分)
• レッグスウィング:壁や柵につかまり、足を前後・左右に振り、股関節をほぐす
• アームサークル:腕を前回し・後ろ回しで大きく回転させ、肩周りをほぐす
• ヒップオープナー:足を膝で持ち上げ、股関節を外に回す(外旋)・内に回す(内旋)
4.3 ドリル (5〜15分)
• Aスキップ / Bスキップ
• Aスキップ:もも上げのリズムを意識しながらスキップ
• Bスキップ:Aスキップに加え、ももを上げた後に前方へ押し出す動きが入る
• リズムジャンプ
• ラダー(はしごのような道具)を使って、片足・両足でジャンプしながら進む
• スピードとバランス感覚を高める
• バウンディング
• 大股で跳ねるように進む動き。スプリントや跳躍の爆発力アップに役立つ
• 無理のない範囲で距離や回数を調整
4.4 競技特性に合わせた動作練習 (5〜10分)
• 短距離選手:スタート姿勢の確認 → 加速走(20〜30m程度)を数本
• 中・長距離選手:ゆっくりしたペースから徐々に上げるラン → 流し(50m〜100m)でフォーム確認
• 跳躍選手:助走のリズム確認 → 低いハードルやミニハードルを使い、タイミングを整える
• 投てき選手:軽めのメディシンボールや軽量器具でスローイング動作の反復 → 本番の投げ動作につなげる
4.5 仕上げのスプリントやテンポアップ (5分)
• 短距離:30〜50mの全力ダッシュを2〜3本ほど
• 中・長距離:レースペースより少し速い流しを数回
• 跳躍・投てき:本番に近いアプローチで1〜2回だけ実施(やり過ぎに注意)
5. ウォーミングアップで気をつけたいこと
1. 時間配分
• 全体で最低20〜30分はウォーミングアップに充てたい。
• 大会本番などでは余裕をもって40〜60分前に開始する。
2. 個人差に合わせる
• 年齢・経験・体質・コンディションによって必要な強度・時間は異なる。
• 疲れを感じる部分があれば、その部位を念入りにほぐす。
3. 脱水を防ぐ
• ウォーミングアップの最中から汗をかくので、適宜水分補給をする。
• 特に夏場は早め早めの水分補給が不可欠。
4. 怪我のサインを見逃さない
• 違和感や痛みを感じたらウォーミングアップのメニューを変更・中断も視野に。学生の場合はすぐに指導者に伝えてください。
• 競技力向上も大事ですが、ケガの予防が最優先。
6. ウォーミングアップ後のクールダウンも重要
競技や練習が終わった後、あるいはインターバル中にはクールダウンとして軽いジョギングやウォークなどで心拍数を下げ、静的ストレッチを行いましょう。ウォーミングアップの効果を存分に活かし、翌日に疲労を残さないためにも必要不可欠です。
まとめ
• ウォーミングアップの目的は「体温上昇」「神経系の活性化」「精神的な準備」「テクニックの確認」。
• 流れは「軽い有酸素 → ダイナミックストレッチ → ドリル → 競技特性動作 → 仕上げの高速動作」。
• 小学生は遊びの要素、中高生は徐々にステップアップ、大学生・社会人はケガ予防と疲労管理をしながら最適化。
• 時間配分は20〜30分を目安に、コンディションに合わせて調整。外気温等によっては必要十分に筋温が温まらないため工夫が必要。
• 終了後のクールダウン(静的ストレッチや軽いジョギング)で疲労を翌日に持ち越さない。
「ウォーミングアップを制する者は競技を制する」と言っても過言ではありません。日々の練習や試合前に、ぜひこの一連の流れを実践してみてください。
体作りとパフォーマンスアップ、そしてケガの予防につながり、競技人生をより長く、より充実したものにしてくれます。
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