スプリントのレースでは、スタートとフィニッシュばかりが注目されがち。しかし、中間疾走区間(いわゆるトップスピードを維持するゾーン)でいかにロスを抑えられるかが、最終的なタイムと順位を大きく左右します。トップスピードに到達した後の加速維持力を高めるための、中間疾走 改善ポイントを深く掘り下げてみましょう。
目次
なぜ中間疾走の質が重要なのか
後半の粘りやラストスパートにも影響
スタートで優位に立てても、中間疾走がバラつきがちだと終盤まで勢いを保てず、レースの後半に失速しやすい。逆に、中間疾走のリズムをしっかり掴んでおけば、身体の余力を残しつつ高いスピードを維持できるため、ラスト30mでの伸びにも直結。
ミリ秒単位のフォーム乱れがタイムロスに
加速後のトップスピードを保つ段階では、「わずかな力み」「微妙な軸のブレ」がタイムの頭打ちを招きやすい。数十mにわたる中間疾走の間にフォームが崩れれば、推進力をロスしてしまう。
中間疾走を伸ばす具体的ポイント
1. 体幹の軸をキープし続ける
• 加速期の前傾姿勢を徐々に起こしていき、最適な角度で体幹を安定させる。
• 中間疾走では過度な前傾になりすぎず、#肩甲骨 を引きすぎないバランスが肝心。ここで意識するのは“動的に安定した体幹”。
• 軸のブレを防ぐため、腹筋・背筋・股関節周りをトレーニングしておくことも重要。
2. 後ろへの腕振り継続とリラックス
• スタートで後ろに強く振った腕を、中間疾走でも同じリズムで維持すると推進力をロスしにくい。
• ただし腕振り に過度な力みは不要。肩・首を柔らかく保ち、肘が上下しすぎないように注意する。
• 上半身を軽く前に押し出す感覚で腕を振り、回転数を支える意識がポイント。
3. ピッチ(回転数)とストライド(歩幅)の最適化
• 中間疾走に入った段階で、自分が走りやすいリズムを見つけると良い。
• #ストライド を拡大しすぎるとブレーキ動作が入りがちなので、#ピッチ とのバランスが大切。
• 身体が仕上がってくるとストライドを自然に伸ばせるようになるが、特にシーズン序盤は回転数重視でフォームの乱れを防ぐ方が賢明なケースも多い。
4. 地面との設置時間を短く
• 中間疾走の局面は、スタートのように大きな力を地面にかけるフェーズではなく、高い回転を維持しつつ落ちにくいフォームを求めるフェーズ。
• 足裏全体を長く接地せず、#ミッドフット や #フォアフット を中心に素早く離地する。
• ふくらはぎや足首の機能が十分に発揮されるよう、日頃のケアやストレッチも忘れずに。
練習メニュー例:加速維持力を高める
1. 疾走区間の延長インターバル
• 30mでトップスピードへ加速 → 30m中間疾走 → 徐々に減速、を1セット。
• 徐々に中間疾走の距離を伸ばし(40m、50m…)、スピード保持の感覚を身につける。
2. アップテンポダッシュ(流しの強化版)
• 80m~120mの距離を、ほぼ全力のスピードで流す。
• スタートは通常の半分程度の力で加速し、30m付近からトップスピード近くまで上げて残りを維持。
• 腕振りや姿勢を意識しながら、疲れてきた後半のフォームを保つトレーニング。
3. ピッチ&ストライド計測ドリル
• ハイスピードカメラやストライドセンサーを使用し、スマホのカメラでも構わないので数十m走のピッチ数・ストライドを記録。
• 1本ごとに微調整し、最適な回転と歩幅のバランスを探る。
• コーチや仲間と動画を撮り合い、上下動 や左右ブレ を確認するのも効果的。
よくある疑問:中間疾走で息が苦しくなる
• 全力に近いスピードを数秒以上維持すると、#呼吸 が追いつかないと感じる場合がある。
• 中間疾走は無酸素的負荷だけでなく、有酸素の要素も僅かに関与しているため、インターバルトレ やテンポ走 などを取り入れて心肺を強化。
• 上半身が硬直すると呼吸が浅くなるので、肩と首を常にリラックスさせる意識を。
まとめ
• 加速直後~トップスピードまでの区間は、わずかなフォーム乱れが大きなタイムロスにつながる。
• 体幹安定や後ろへの腕振りを継続しつつ、ピッチ とストライド のバランスを保って走ることが重要。
• 接地時間を短く、落ち着いたリズムを維持することでラスト数十mの伸びも変わる。
中間疾走の精度を高めれば、スプリント のスタートやフィニッシュだけでなく、レース全体の安定感と後半の粘りが確実に向上します。わずかなロスを削るために、ぜひ 加速維持トレーニング に取り組んでみてください。怠りがちだったこの区間を極めることで、自己ベスト更新やレースでの勝利がぐっと近づくはずです。