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ラスト30mを強化せよ:スプリント後半に粘るスタミナとパワーの融合

ラスト30mを強化せよ:スプリント後半に粘るスタミナとパワーの融合

スプリントレース(100m・200mなど)において、上級者が成績を伸ばす際に注目すべきポイントの1つが“ラスト30m”の区間です。

スタートや加速で優位に立っても、後半の失速を防げなければタイム短縮も勝利も難しくなります。終盤を攻略するには、単なる筋力やスピードだけでなく、「スタミナを支える体内エネルギーシステム」と「フォームを崩さない筋神経制御」が密接に関係しています。ここでは、スプリント後半で粘るための生理学的背景と、具体的トレーニングの組み立て方をさらに深く解説します。

スプリント後半に起こる身体の変化

エネルギーシステムの移行

• スタート~加速区間(0~約7秒)
• 主にATP-PC(無酸素アルクト酸系)が中心。限られた時間内で爆発的な力を発揮できるが、枯渇すると急激に出力が落ちやすい。
• 後半(7秒以降)
• ATP-PCの再合成が追いつかず、解糖系(グリコリシス)が主体に移行。乳酸の蓄積や水素イオン増加が筋収縮を阻害し、失速やフォーム崩れを起こしやすい。

乳酸と疲労の関係


• 乳酸そのものより、水素イオン(H+)の増加が筋肉のpHを下げ、酵素の働きを弱めるのが大きな要因。
• 後半区間でパフォーマンスを維持するには、短時間高強度の乳酸耐性トレーニングによって、筋内環境の悪化を乗り越える力を育む必要がある。

神経制御とメンタル
• 疲労が溜まり、筋出力が低下してくると、中枢神経からの指令も乱れがち。腕振りや呼吸が乱れ、体幹軸のブレにつながる。
• 後半でも力を出し切るには、身体と神経系が「ハードな状況でも動き続けられる」と学習するようなトレーニングだけでなく、集中力・メンタル面も大きく影響する。

ラスト30mで粘るためのトレーニング要素

スピード持久力(Speed Endurance)の養成

スピードエンドラン(80~150m)
• 80m、100m、120m、150mなどの距離を全力または95%以上で走り、短めのレスト(2~3分)で複数本繰り返す。
• 後半の乳酸蓄積をあえて体験しながらも、フォーム維持を意識することで、レース終盤の動きが洗練される。

レペティション走(長めの距離×少本数)
• 200m~300mクラスの距離を高速(90~95%)で走る練習。セット間の休息は長めにとり、1本ごとの質を高める。
• 短距離レースでも、200m以上のレペティションで「後半の粘りとフォーム維持」を身につけることが可能。

乳酸耐性トレーニング

インターバル(短距離反復)

• 60m~80mを高強度で走り、少ない休息で複数回行う。後半数本で脚が重くなる感覚を乗り越えることで、スプリント後半の乳酸耐性が上がる。
• 回復を取りすぎると狙いが変わるので、適度に短いレスト(30~60秒など)を設定し、体内に疲労物質が残った状態でフォーム維持を練習。

“負荷を掛けた”特殊ドリル

• ゴムチューブを活用した牽引など、スタートダッシュとは逆に「中間~後半のスピードで牽引をかける」工夫もあり。
• やりすぎるとフォーム崩壊やケガに繋がるため、安全範囲の負荷設定が大切。

フォーム維持力アップ(神経系と筋力の融合)

終盤アクセルドリル

(30m) + (30m)の合計60m。最初の30mはやや抑え気味(80~90%)で走り、中間から後半の30mを一気にギアアップ。
• 力が抜けてきた状況下で一度再加速する練習により、後半で身体が重くなっても腕振りや姿勢を維持する癖をつける。

高速動作ウェイトトレーニング

• 中重量×高速挙上のスクワット、クリーン、パワースナッチなどで後半の爆発力を強化。
• 無闇に高重量を扱うのではなく、筋肉と神経系が素早くパワーを発揮するタイミングを習得することが焦点。

ラスト30mを伸ばすコツ:実戦面


1. 中間疾走からのフォーム切り替え
• 中間疾走が乱れた状態で後半に突入すると、ラスト30mどころか終盤全体で失速が大きくなる。
• “加速からトップスピードを維持する局面→最後まで粘る局面”の2段階を意識し、練習でも区間を明確に分けて取り組むと効果的。
2. メンタル面の準備
• 後半の苦しい場面でフォームを保つには、集中力が非常に大切。
• インターバルトレーニングなどで苦しさを経験しつつ、やり切るメンタルを鍛えることで、レース本番の不安を減らす。
3. 腕振りと上半身の使い方
• 後半こそ腕振りが疲労で小さくなる選手が多い。肩をリラックスしながら後ろへの引きをキープして、脚のリカバリーを支える感覚が重要。
• 顔の力みを取るだけでも余計なエネルギー消費を防げる。 

まとめ

1. スプリント後半を制するには、スタミナ(乳酸耐性)とパワー維持が不可欠。
2. インターバルやレペティション走で疲弊した状態でもフォームを崩さず走る練習を重ね、終盤の失速を最小限に抑える。
3. 神経系と爆発力を高めるウェイトトレやプライオメトリクスを並行し、トップスピードが落ちない身体を作る。
4. フォーム維持のために、姿勢・腕振り・メンタルを意識し、体軸のブレや力みを極力抑える。

ラスト30mでの粘りは、多くのスプリンターがギリギリまで詰めきれない最後の攻め所。ここを攻略すれば、大幅な自己ベスト更新やレースの勝ち負けを一気に引き寄せられます。練習での苦しい瞬間を「ラスト30m」と捉え、ぜひ集中して取り組んでみてください。あなたのスピードがさらに光り輝くはずです。

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