— 身体と神経を“走れる状態”にチューニングする —
陸上競技、特に短距離においてウォーミングアップは
「準備運動」ではありません。
ウォーミングアップの本質は 身体(フィジカル)と神経(ニューロン)を “走れる状態” にチューニングする作業。
この“チューニング精度”が高い選手ほど、
ケガも減り、スピードも安定して伸びていきます。
その核心を、科学と現場の両面から徹底解説していきます。
目次
ウォーミングアップの目的=身体×神経のチューニング
ウォーミングアップには、大きく3つのチューニング工程があります。
① 身体を動ける温度にチューニングする(温度スイッチ)
筋肉温度が1℃上がるだけで、
筋の伸張反射・力発揮スピードが大きく向上します。
逆に温度が低いままだと、
ハム・ふくらはぎ・股関節まわりが固まり、
“固いゴム” で走るような状態 になる。
つまりウォームアップ冒頭は、
身体を「ケガしない温度」から「走れる温度」へ引き上げる工程。
② 可動域を“出力が出る可動域”にチューニングする(可動域スイッチ)
ここが一般選手と伸びる選手の明確な差。
大事なのは
最大可動域ではなく「運動可能な可動域」。
柔らかいだけでは意味がなく、
その範囲で“走れる動き”を作れることが重要。
例:
- 足首が硬い → 接地が潰れてスピードが乗らない
- 股関節が硬い → ピッチが落ちる
- 胸椎が硬い → 腕振りが小さくなる
ウォームアップは、この“使える可動域”をセットする時間。
③ 神経系を“高速モード”にチューニングする(神経スイッチ)
スプリントの速さは筋力より神経系。
ウォーミングアップ後半で、
- 接地タイミング
- ピッチ
- 反応速度
- 伸張反射 などの神経回路を 高速モードに切り替えていく。
これが弱いと、
“今日スピードが出ない日” になる。
まとめると、ウォーミングアップとは?
✔ 温度のチューニング
✔ 可動域のチューニング
✔ 神経のチューニング
つまり 走るための全システムをオンにするルーティン である。
この視点があるだけで、アップの質は別物になります。
UACA式ウォーミングアップ:チューニングの実践フロー
指導スタイルに合わせて最適化した内容です。
① ムーブメント・ジョグ(体温スイッチ)
目的:身体の温度UP × 全身の協調性UP
- スキップ
- サイドステップ
- バック走
- 鬼ごっこ系
- 軽いプライオ系(簡単なサーキット形式も行う)
▶ この段階で「ちょい汗ばむ」状態へ。
② ダイナミックストレッチ(可動域スイッチ)
目的:運動可能な可動域へ整える
- レッグスイング
- 股関節ムーブメント
- アームサークル
- 足首しならせ
- ハムのダイナミック伸長
などUACAではたくさんの種類を取り組んでいます。
▶ 静的ストレッチはこの時間帯は避ける(出力が落ちるため)
③ スプリントドリル(神経スイッチの入り口)
目的:今日の走りを体にインストール
“動きの質”の指導が最も活きる時間。
- Aスキップ → ピッチ感
- Bスキップ → スイング軌道
- ニーアップ → 骨盤のポジション
- トゥーポイント → 足首反射
- リズムチェンジ → 神経刺激
などUACAではたくさんの種類を取り組んでいます。
ここで神経系のチューニング精度が決まる。
④ 加速刺激(神経スイッチの最終段階)
目的:本練習でスピードが出る状態まで神経系を仕上げる
- 20m流し
- 30mの軽い加速
- ドリル → そのまま走り出す刺激
- リズム重視の流し
ここで、
身体 × 可動域 × 神経の3つが“走れる状態”に合流 する。
ありがちな失敗とチューニングの観点での改善策
身体が温まる前にドリル・ダッシュ
→ 出力をかける準備ができていない=怪我リスクMAX
▶ 改善:ムーブメント時間を削らない
ドリルが“儀式化”して神経スイッチが入らない
→ 動きはしているが、走りに繋がらない
▶ 改善:
「今日のテーマに必要な3つだけ」
にアップを絞ることで、神経回路が活性化する。
可動域が整わないままスプリント
→ 接地がズレてスピードが乗らない
▶ 改善:ダイナミックストレッチを“狙いを持って”入れる
例:
- 足首硬い選手 → 足首ムーブメントを倍に
- 骨盤後傾の選手 → 大腿四頭筋・腸腰筋の動的伸長
年齢別のチューニングのコツ
小学生
- 遊びの中で神経スイッチを入れる
- 足首の柔軟性を最優先
- ドリルは短い・テンポ良く
中学生
- ピッチ感覚・接地の位置の統一
- 可動域にバラつきが出やすい
- 神経刺激がその日の走りを大きく変える
高校生
- アップと本練習のテーマを完全連動
- 出力系練習の前に“神経チューニング”を必須化
- 冬季とシーズンでアップの質に差が出る年代
まとめ:ウォームアップは“走りの設計”そのもの
ウォーミングアップ=
身体(温度・可動域)と神経を“走れる状態”にチューニングする時間。
チューニング精度が高ければ、
- ケガしない
- スピードが出る
- 技術が安定する
- 練習効率が上がる
全てが上向く。
UACAでは毎回、
“今日の走り” をアップから設計することを大切にしています。
会員・体験希望の方向けメッセージ
もし、「速く走りたい」「短距離タイムを伸ばしたい」と考えるなら、
UACAは “走力だけでなく、身体の使い方・基礎を大切にする” 環境を提供します。
過去記事のドリル内容をベースに、
あなたの身体の状態や目的に合わせたフォーム指導・段階的トレーニングを行い、
しっかりステップアップできるクラブとなりますので、
ご興味ある人は、ぜひ体験参加・見学をご検討ください。



